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能作克治さんは能作4代目社長でいらっしゃいますが、これまでの伝統的な鋳物とは異なるものづくりをされていますよね。能作様はどのようにこれらの商品開発を舵取りされたのでしょうか?
伝統産業の高岡銅器で知られる富山県高岡市で1916年に創業し、従来は仏具、茶道具、花器などを製造し、問屋に卸すメーカーであり、「技術」を売る立場でした。
ただ、お客様の顔を見たいという思いから何かオリジナルの商品を作らなければという思いがありました。
高岡銅器の技術を生かし、まずはオリジナルの真鍮製ベルや風鈴の開発を始めました。
商品には絶対の自信がありましたがもともと問屋に商品を卸すメーカーだったため知名度もなく、最初は中々見向きもしてもらえませんでした。
そんな中、10年前に東京で展示会を開催し、それをきっかけにセレクトショップや百貨店でも商品を取り扱っていただけるようになり、知ってさえもらえれば自分たちの商品、技術は評価される、そう確信しました。
こうして徐々に販路を拡大していっているとショップの店員さんから「能作で金属製の食器とか作ってみてはどうですか?」と声をかけてもらう機会があり、その何気ない一言がきっかけで、食器づくりを始めました。
しかし得意とする真鍮は食品衛生法上ダメ。他の金属で何かできないか、そう考えたときに錫に行き着きました。
錫合金の食器は世の中にあるが錫100%の食器は無い。ならば作ってみるか。こうして錫100%の食器作りがスタートしました。 |
商品を開発されるに当たってご苦労された点などありましたでしょうか?また魅力も教えてください。
錫100%で商品を作れれば非常に錆びにくく、抗菌性も高い食器ができ上がります。しかし、世の中にないということは、それだけ難しいということ。
やわらかいという錫の特性から削ったり、研磨したりすると商品自体が曲がってしまいます。そこでうちの得意とする鋳造技術が活きてきます。鋳造技術を用いれば型どおりの商品ができ上がる。
ひたすらに型の精度をあげる日々でした。商品の完成度は上がる中、商品として使っていくとどうしても曲がってしまう欠点をどうすれば良いのか考え続けました。
そんな時に、プロダクトデザイナーの小泉誠さんと出会いました。彼はうちの商品を見て、「曲がるのなら曲げて使えばいいじゃないですか。温かみや味があって面白いと思いますよ」と言われました。
まさに目から鱗の発想で、これだ!と思い、曲げる楽しみを加えた錫100%の商品開発が始まりました。このように伝統産業の技術を用いて新たなものを創造することがこの仕事の魅力だと思っています。 |
では最後に今後の展望をお願いいたします。
今後はやはり、自社だけでなく「高岡の伝統産業を盛り上げていきたい」という思いがあります。
どこの産地にもみられる現象ですがライフスタイルの変化を捉えた商品開発が上手くいかず、技術はあるけどそれを商品に生かしきることができていないメーカーが数多くあります。
ほんの10年前までは産地の一メーカーだった当店が現在は徐々にですが、いろいろな方に知っていただいてきております。最近ではどう商品を広げていけばいいのか相談に来る同業者も現れてきています。
私たちが得た知識を地域に還元し、地域全体が以前の活気を取り戻せるようにこれからも精進していきたいと思います。 |
伝統工芸を現代の生活に持っていくことは皆さん努力されていますが、なかなかうまくいっていないのが現状かと思います。そんな中、能作様は日本はもちろんのこと、海外にも販路を拡げている数少ない成功例です。それぞれの会社が、長年培われた独自の強みを持つ日本の伝統産業にとって大変勇気付けられることですね。
大正5年(1916年)創業。長い歴史の中で培われた伝統・技術・精神を、今の時代に照らし合わせ次の世代へと受け継いでいくことを信念とし、数々のヒット商品を生み出し続けている。インタビューページへ |
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