経済産業省が行っているグッドデザイン賞を、17回も受賞されている、曲げわっぱの老舗「栗久」六代目栗盛俊二氏。この仕事を始められるようになったきっかけを教えてください。

もともとうちの親父が樺細工の職人で、親父の弟が曲げわっぱ職人をしておりました。中学のとき親父の跡を継ごうと決意し、能代工業高校を卒業後、18歳のとき本格的に曲げわっぱ職人の道へ飛び込むことに。

それから1年と3カ月経ったある日、師匠でもある親父が脳溢血で倒れてしまいました。右半身不随、言語障害の残る身体となってしまった親父。二十歳そこそこの私が、そんなハンデを背負った親父を抱え、自分のためではなく、家族のために頑張っていかねばならないという時代が長くありました。

でも、曲げわっぱを作ることはそんな簡単にできることじゃない。作った曲げわっぱを親父に見せると、言語障害の残る親父は、ただ「うーん」と首を横に振る。「何でだよ」。そう聞いても応えてくれない。腹立たしいけれども、親父が「うん」と頷かないということは何か欠点があるはずだ。そう思い、もう一度自分が作った曲げわっぱを紐解いてみるとなんとなく分かってくるんですよ。

作っていたときの、これぐらいでいいだろうという妥協点、誤魔化しを親父はちゃんと見抜いていたんです。妥協しない、誤魔化さないというものづくりの大切さを知り、今日までやってこれたのは、この親父のおかげだと思っています。


そんな尊敬してやまない五代目のお父様とは、いったいどんな方だったのですか?

私の親父は、日本の動きも世界の動きも、すべて分かったうえで、時代の先取りを完全にやり切った男でした。

日本橋の丸善さんより輸出用に曲げわっぱを発注された際、彼国は湿度がこれぐらいしかないから、今ある日本のつくりのままでは無理だ。輸出用にするためには構造を変え、接着する材料も変えなければならない。そう考え、試行錯誤して丸善に納めた父。昭和の時代にそんなことを考え、実行した親父を本当に凄いと感じました。

また、親父は道具作りの天才でした。昔の曲げわっぱは板にマーキングし、勘を頼りに巻いて作っていたのですが、その方法だと常に同じサイズのものを作れない。少しずつではあるけれども小さな差異が生まれる。その差異が、曲げわっぱという道具を使うお母さんたちにとって、扱い辛いなぁと感じる状況を作っておりました。

そんな状況を何とかできないものかと、曲げわっぱの長い歴史の中で初めて取り組み、寸分違わぬものができるようにするための治工具を作ったのがうちの親父でした。また、その治工具の誕生には別のメリットもありました。それは何十年経っても全く同じものを提供できるということ。長く使い続けていると壊れてしまい使えなくなったりする。そんなとき、また同じものがほしいなぁ、というバックオーダーに対して何十年経っても応えることができるんです。

時代によって変わるお母さんたちのニーズ。その変化するニーズにどれだけ応えられるか?そんなことばかり考えていたものだから、たくさん作って儲けようなんて考えは二の次三の次。商売は下手で大変な親父だったけれども、何よりも曲げわっぱを使ってくれるお母さんたちのことを一番に考える職人でした。そんな職人を父親に持ったことは本当に恵まれたことだと思います。


そんなお父様の想いを継ぎ、頑張っておられる栗盛さん。そんな栗盛さんが作られている曲げわっぱの魅力をお聞かせください。

曲げわっぱとは、秋田杉の一枚板を曲げて作るもので、湿度の高い日本の気候風土に最も適した入れ物。その理由の一つは湿気を取ってくれる吸湿性。この吸湿性において食べ物の腐敗を防ぐことができるんです。

それから、外気温に左右されない断熱性。木材とは天然の優れた断熱材で、中の温度を上げません。プラスチック容器や金属容器にはない吸湿性と断熱性が、食べ物をおいしく保ってくれます。湿度が多く食べ物が傷みやすい京都の夏でも、木材のお弁当箱に入れておけば24時間全く腐敗することはないんですよ。

それから、曲げわっぱの特長として、木材で作った四角い入れ物と比べて10倍の強度があることが言えます。四角い形をした入れ物は角々が弱点で、どうしてもそこから弱くなってしまう。それに比べて曲げわっぱは、一枚の長い板を煮沸して曲げるため側面に角が無くなり弱点も無くなります。


なるほど、食べ物を入れるには理想的な容器なんですね。では、最後に栗盛さんの夢をお聞かせください。

曲げわっぱで底の丸い器を作ることが私の夢なんです。強度の高い曲げわっぱ。しかし、底板まで一枚板で作ることはできません。

底板の隅が弱点となり、ご飯を取り出し辛くしていたり洗い辛かったりと、良くはなってきたけれど、使い手にとって使いやすい道具になるにはまだ足りない。そんな問題を解決するために、何とか底の丸い器ができないものかと日々考えております。

そんなことを考えていると、ふと親父を思い出すんです。親父が考えていた、その時代のお母さんたちのニーズに応える道具作り、その考え方が私の中にも変わらず息づいていることを感じ、本当に嬉しくなりますね。


親を想い、人を想う道具作り。職人としてとても高い志を持っていらっしゃる栗盛俊二さん。本日は本当にありがとうございました。





栗久

明治7年(1874年)創業の大館曲げわっぱを代表する老舗。先代より受け継いだお母さんのニーズを形にするモノづくりの心。栗久の曲げわっぱは、そんな優しさに溢れている。インタビューページへ





栗久
曲げわっぱのお弁当箱(無塗装)

13,200円~


栗久
曲げわっぱのお弁当箱

9,900円~


栗久
曲げわっぱのおひつ

48,400円


栗久
曲げわっぱの飯切り

88,000円


栗久
曲げわっぱのセイロ

20,900円


栗久
曲げわっぱのおわん

5,500円~


栗久
曲げわっぱの酒器

2,750円~


栗久
曲げわっぱのアイスペール

19,800円


栗久
曲げわっぱのフルーツボウル

37,400円


栗久
曲げわっぱのざるせいろ・そばちょこ

6,050円~




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