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はじめに加藤さんがプラッツを立ち上げられた経緯を教えてください。
大学卒業後、5年間マーケティング会社で仕事をしたのち、明治より続く実家の寝具屋の五代目として跡を継ぐことになりました。
経済成長が著しい時代、機械化、効率化が叫ばれ、良くも悪くも古き伝統的な道具が姿を消しました。確かに伝統的なものは世の中が変化するにつれ、現代社会において使われなくなることはあると思います。
しかし、効率化を追い求めるがために、本当に良いものまで失われてしまうのは問題だとも思います。
そんな思いから、今より16年前に"良いものを残そう"というコンセプトのもと、現在の生活雑貨・家具を扱うプラッツを立ち上げました。
なるほど、ではその"良いものを残す"というコンセプトについてお聞かせください。
"良いものを残す"ということに不可欠なのは、作り手の豊富な知恵と確かな技術、利用者の製品に対する正しい知識です。現在大型量販店で売られている寝具は、低コストで安価ではあるものの低クオリティーであるともいえます。機械化、効率化が進むことにより大量生産が可能になったことが、もの作りを安易にしました。
しかし、天然のものを相手にする以上、機械では対応しきれない繊細な人の手による作業を必要とします。それを無理にでも機械で行おうとすると、犠牲になるのは品質です。
そういったクオリティーの低い商品が流通してしまうことで、人々の間で良いものと悪いものとの区別ができなくなる。本当に良いものとは何かという知識が市場より薄れていくことに危機感を感じます。
また、必ずしもすべてではありませんが、多くの場合このことが安易なコピー商品を増やすことにもつながり、こちらの方が事態は深刻です。
コピーするということは、もの作りをする上で一番大切な、その道具が作られた"理由"を無視することです。
道具には使い勝手や歴史など、そうなった理由が必ずある。その理由を理解しているからこそ創意工夫ができるし、新しいニーズにも応えられる。
しかし、真似て作られたものにはそういった理由がないため、必ずといっていいほどトラブルを起こします。
お座布団ひとつとってみても、他社様で売れているからとコピーし、形だけを作り、利益確保のため生産コストを下げ、質の悪さをプリントで誤魔化すようなモノづくりがされています。お客さんがそんな粗悪な商品を標準だと認識してしまうことにより、失ってしまうのは、その商品のみならず、その商品の背景にある歴史や文化なのです。
昔の日本人は良いものと悪いものを区別するため、ちゃんとした知識を持っていました。その知識を生かし、世界有数の洗練された文化を培ってきた日本が、知識を失うことにより文化レベルを下げている現状を悲しく思います。もの作りを通じて少しずつでも、本当に価値のあるものを知っていただき、ものが作られる理由を後世まで伝えていければと考えております。
なるほど、加藤さんの寝具にはそれゆえの"良いものを残そう"という想いが込められているのですね。本日は本当にありがとうごさいました。(2008年2月) |
創業百余年の老舗寝具店。数十種類の柄からセミオーダーできる座布団や寝具は、老若男女を問わず絶大な人気を誇る。インタビューページへ |
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