|
|
この仕事に就いたきっかけ
子供の頃は、漆器なんてどこで売ってて誰が買うのか分かりませんでした。なんとなく学校を卒業して親の言いなりで東京の漆器問屋へ就職。東京都内のデパートに出入りする業者になりました。
デパートでは、いつも地元山中で見ていた親父たちの写真が、商品と一緒に並んでいました。それらの商品は、当時「古臭い」と思っていましたがよく売れていました。
「木を加工してお椀などを作ること、漆を塗ることってそんなに凄いことなのだろうか?」 |
そんな疑問を持ち、改めて自分が育った山中と山中漆器について考えました。どこの家にでもあるお椀、コタツの上でミカンや煎餅が載ってる菓子鉢、片手でものを運べる茶盆、ハンドクリーナーでタッチライトまで山中漆器。山中漆器はその業界では日本一の生産量を誇っていたのです。
人口1万人にも満たない温泉街、都会に行って初めて分かった地元の凄さ。地元の人間は、都会に出てもなぜか自然と山中温泉に帰ってきます。自分が山中温泉に生まれ、この商売に就いたのは至って自然な形だったのかもしれないと、今では思っています。 |
山中漆器の魅力
山中漆器の基本は木地の完成度。山中漆器の拭漆仕上げという漆を薄く塗った器は、木地が良くなければ商品にならない仕上げ方法です。
そのような薄塗りの漆器は、市場では安価なものとして認知されていますが、本当は山中漆器でしかできません。漆を厚化粧のように塗り重ねる堅苦しい器に対して、素材を生かし、健康的でカジュアルな漆器が山中漆器の特徴です。職人の熟練した技術がなければできません。
漆器はどうしても外見の蒔絵、沈金、上塗りなど豪華な部分に目が行きがちですが、最も重要なのは元となる木地です。当面は山中のろくろ技術を全面に押し出すコンセプトを崩さず、商品作りをしたいと思っています。 |
今後の展望
山中温泉にいてもそれほど知られていないということを考えると、世界の99%の人々は山中漆器の特徴・技法について知らないと思います。
まずは国内外を問わず、少しでも山中漆器を知ってもらうこと。それが山中に生まれたものとして自然な形だと考えています。 |
明治41年(1908年)、我戸木工所として創業。木地屋の理念を受け継ぎ、漆器の元となる木地の完成度にこだわったモノづくりをしている。Karmi Tea Canistersはドイツ連邦デザイン賞2012において銀賞を受賞。インタビューページへ |
|
|
|
|